開拓




夕刻の満月をまえに銀色に輝く月が天辺にいました。
木星が、月を見詰めてた。


ずうっと昔。
毎晩のように音楽を聴きにライヴハウスに行って、
時にはしんみり、時には大勢で酒を呑み語り明かした夜がありました。


もっと昔。
大学近くの四畳のあたしの部屋に毎晩大勢の友人が集い語り明かした日々。
音楽をしてる友人、彫刻、木版、油、木彫、家具デザイン、建築。
みな今その時に熱を注ぎ込んで生きてた。


時を経て今。
変わらず月は漆黒の空に浮かび、星が寄り添ってる。


夢見てた未来が、現実に押し潰されるように思えても、それは妄想。
だれも夢を押し潰したりしない。
夢を手放すのは、自分以外にいない。


どんなモノコトも、どんな仕事も、自分と人を癒してるはず。


音も絵も、苦しみの末に生み出された音であっても、
自分を確実に癒し、聴く者の心と精神を癒し澄み渡らせる。
絵も、然り。


物販だってそう。
良い商品を売ることで、充足感と糧を得て、購入された人は満足感を得られる。


どの仕事もそう。


それに当てはまらぬ仕業が、要らぬモノコトじゃないかと思う。
だまして糧を得る仕事。


罰せられるのが遅かれ早かれ、成す人はもう要らないということを自覚しているはず。
やめる勇気が、その人自身も、他の人も、幸せにする。
それは、自分も人も癒すコトになる。


生きてゆくには、勇気が居る。


どんなに小さいコトも、誰が見ても人生を揺るがすような大きなコトも、
みな自分が選択している。


人に決められたと思ってても、人に勧められたと思ってても、
そう成るしかない人生なんだからと思ってたとしても、
最終的には、自分で選択して、歩み、今に至ってるのだ。


今の自分は、自分が作ったのだ。
そう自覚することが、心を優しくする。
そして、過去を変える勇気を得る。
過去を選択する自己の変化を得るのだと思う。


過日、語り明かした彼らは、今もきっと、
ものすごい悩みつつ、今を基本に自分の人生を生きててくれると思う。


人生を切り拓く時間は、突然訪れる。
なにかを言われるとかでなく、なにか事件が起こるでもなく、
休火山が火を噴くように、突然、なんの前触れもなく自分のなかから生まれてくる。


今まで、の、慣習に縛られることなく、
時にはまわりの人に寂しい悲しい驚きの気持ちをもたらすかもしれない。
それでも拓く未来を垣間見られたときは、躊躇なく進みたい。


語り明かした幾つもの夜を越えて、
時には泣き明かした幾つもの夜を越えて。


結婚とか恋愛とかじゃない、大きな仕事を成し遂げるとかでもない。


それは言ってみればオマケだ。
そんなことよりも、もっともっと素晴らしい一番大切なコトを得るために、
突然訪れた開拓の時を無駄にしない、勇気を持ちたい。


どんなに時を経ようとも、陽が暮れて、夜陰に月が姿を現し、星が添い、
明星とともに、新しい陽が昇る、のならば、
怖がることは、なにもないのだ。