金色の月

午前二時頃、金色の月を観ました。


会社の金策や、仕事になるかどうかわからぬ打合せ、取引先の倒産で仕事がぽしゃったり、
トンネルをひたすら歩き続けるような作業、そして、未来への想い。
そんなことで、頭も心も、時間もいっぱいで、空を仰ぐことを、しばらく忘れてた。
そう、気付けた。


22日の木曜、続けざまに、新規の仕事を二本戴けた。
やっぱり、あなたじゃなきゃ、お任せできない。
そう、担当者が言ってくれた。


安値で仕事を請け負ってる会社に任せたけれど、
出来上がりに、大元の会社も、そして代理店も、満足が不足気味だった、とのことだった。


納品はずっと先なので、すぐにお金になる仕事ではないけれど、
なにより、そう思って再び任せてくれたことが嬉しかった。


金曜、その打合せを終え、経費削減のため業者と細かな打合せを終え、
そして、戴いた仕事についてお客様の意向をまとめ、ラフの制作をしていたら、
いつのまにか夜半をとうに過ぎてて、仕方なくタクシー。
もうちょっと気温が下がれば、自転車を再開したのだけれど。


そして、午前二時。
暮らす部屋の向かいに広がる公園の入口あたりで車を降り、
ふと信号を見るために視線をあげたとき、視界の上の方に、その金色の月が待ってました。


満月にむかって膨らむその月は、ほんとに美しい金色で、
線香花火の、あの膨らみのように輝いてた。


キレイだ、と、つい呟いてた。


部屋に戻ってすぐに眠ってしまった、その夢にも、幾度も金色の月が出てくれた。
忘れられない、あの金色の月。


あたしのなかで、静かに、はっきりと、新しい時間がはじまってるような気がする。
仕事とか具体的なカタチで見えることなんかでなく。


夏目漱石の確か「三四郎」のなかで、こんな文章がある。


 日本より世界は広い、世界より宇宙は広い、宇宙よりも銀河は広い。
 ただ銀河よりも広いものを想像できる人間の頭の中はもっと広い。


そこんとこが、あたしにとっては一番大切なのだ。
新しい時間が、はじまってるんだ。