三日月




憂歌団 / ザ・エン歌
名曲です。





ひさしぶりに空を見た。
洗濯物を採り入れてたときに、ふと明るい方に目をやったら、三日月が浮かんでた。


なぜか日記にそれを書き止めておきたくて。
濃い藍色が広がる空に、真っ白の三日月があまりに美しかったから。





10月中旬を過ぎてようやく冷え込んできたので、
数日前から毎日ちょっとずつ、眠るまえに衣替えの作業をしてる。


気に入ったものはボロボロになっても捨てぬ質なので、
上京してすぐに買った服も、なん着も持ってたりする。
そんなのが出てくると、お金がなかったほんとに貧乏な頃を、懐かしく想い出す。
いや、今でも貧乏なのだけど(笑。


服一着一着に想い出が籠ってて、とても簡単には捨てられるものじゃない。


働いて、稼いで、自活してからもうもの凄い年月が流れてるけど、
アンダー用に十何着も揃えた、キャミソールとかスパッツとか、ソックスとか。
気に入った服の色違いを含め、一度になん枚も買ったり。
そんな、世に言う大人買い、みたいなふうに買った服もたっくさんタンスで過ごしてる。


気に入って、初めて買った紺のキャミソール。
十何年前だろうか、色も褪せて、ちょっとほつれてるけど、大事な服。


そんな、古い服を手にとるたびに、
もろもろ、ぽろぽろ、想い出や買ったときの自分の想いが駆け巡る。


色違いで買った服とかは、あまりやっぱり着なくて、
なん年かしたら着るかもしれない、という理由で、再び仕舞い込むのは、
なんだか嫌になってきて。
すぱっと寄付するなり捨てるなり、決断したい、と思うのだけど、なかなかムツカシイ。


数年後には、ビルが見えない田舎に隠居するつもりだから、
買い物の欲も無くなって、今ある服が大切な備蓄源になる気がするのだ。
で、すり切れた服の後がまに残しておこう、だとか、屈折した理論が頭を駆け巡る。


幾つになっても、あたしはカッコワルイ。





そんなふうに時間を過ごしてたら、三日月に、月にひさしぶりに会った。


 まぁゆっくり、やりゃあええが。


てな声を聞いた気がしたのだ。
あたしが発した声かもしれないけれど。


 焦ってなんぼのもんじゃ。
 ゆうっくりやりゃあええて。


時満つれば、おのずと時来たる。