藍色

午前四時。
最近のいつもの帰る時間。


事務所のドアを閉め、階段を降りて外に出たら、
藍色の美しい空に細い月が浮かんでた。


おつかれさま。
と自分に呟いたら、月が一瞬輝いた気がした。


事務所に置いたっきりの自転車。
今日こそは自転車で帰ろう、と思いつつ、疲れちゃって気力が起きない。
そうしていつも手を上げて車を止め、タクシー帰りになる。


石巻出身の運転手さんには、地元の方でしか言えない、貴重な話を伺えた。
募金によって集まった、全国各地、世界各国からの有難いお金、
そして、国からの有難い補助金は、充分にみないただいてる、と。
ほんとにありがたい、と。
あとは、移住計画を立ててくれる国、自治体、援助団体の問いかけに、
被災者が、前向きに検討し、勇気を出して決断することだけなんですよ、と。


沖縄出身の運転手さんには、基地移転の運動をしているのは、
住民ではなく、本州から来た左翼の方々がほとんどです、と。
賠償金で稼ぐのを、沖縄住民は複雑な思いでみてるんです、と。


数日空いて、続けて二度乗せてもらった運転手さんもいた。
たしか東京出身の方。
がんばってるねーと言ってくださり、
その方が買い置いてた缶コーヒーを帰り際にくださった。
これから家に帰るのに、缶コーヒーを渡すなんて、ちょっと可笑しくて、嬉しかった。


午前四時に事務所を出て、車に乗ると、乗ってる間に空はぐんぐん明るくなる。
藍色が紺色になり、部屋に戻ってちょっとすると、すぐ空色になる。
カラスが起きて鳴きはじめ、続いて雀が目覚める。
ちゅんちゅんという雀の声を聞きながら、寝なきゃ、と布団をかぶる。


午前十一時には仕事場に居る。
帰るのは午前四時。
キツイ毎日だけど、素晴らしい出会いもある。
かけがえない、あたしの大切な時間でもあるんだな。