視線




Ray Charles / That's Enough


敬愛するレイのあまり知られてないブルース。
なごむ。
夜更けの、綿菓子みたいな雲に月が漂うさまが、よく似合う。





あたしは免許証というものをひとつも持ってなくて。
三年ほどまえから、無性に車の免許が欲しかった。


友人に、「ワーカホリックか?」と言われるほど忙しい毎日だけど、
免許を穫る!とある日無性に思い立ち、
今、信頼する友人の勧めた自動車教習所に通ってる。


まだ三週間ほど。
もうすぐ一段階がなんとか終われそう。


マニュアルを選んだ。


仕事仲間には、なんでマニュアル??と言われるけれど、
どうせ穫るなら、MTじゃなきゃ。
これは、譲れない。


一段階で15時間。
二段階で19時間。
実車時間。


猛烈な仕事のスケジュールと相談しながらだから、それこそほんとに大変だけど。
実車10時間を過ぎて、マニュアル車の楽しさが、なんだかわかってきた。


ホントの最初は、クラッチとアクセルの踏み加減がわからなかったり、
速度によってブレーキとクラッチを踏み分けたり、なんてのも、
気が狂いそうにこんがらがって、
わかんない、覚えない自分に腹が立って、教習所の人気のないベンチで泣けちゃった。


けど、ちょっとずつ、ちょっとずつ慣れてきて。
5時間めか6時間めにAT車に一時間だけ乗ったのだけど、
この一時間、マニュアルに乗せてくれ!って思った。


AT車は、道具としてとても優れてる。
でも、マニュアルの面倒臭さ、面白さをちょっとでも垣間見てしまったから、
使い勝手がよ過ぎて、詰まらなかった。


なんて、偉そうに書いてるけど。
まだ一段階を終える終了検定、終了学科も終えてない、中途半端もんなのだ。
なんも言えない。


けど、ものすごく大変だけど、ものすっごく楽しいのだ、マニュアル車





担当の教習の先生が、他の先生よりも多く、一緒に乗ってくださる。
あたしの担当の方はとても素晴らしい先生で、教え方も、頃合いも、叱り方も、
ぜんぶしっくり来る。
あたしは、幸せもんだ、と思う。


その方が言った言葉。


 先に目標を定めて。
 そこに向かってハンドルを切る。
 近づいたら、また先に目線を飛ばして。
 その繰り返しなんです。


もちろん車の死角になる周辺には気を配りながら、だ。


そのスタンスは、運転にも、そして、生き方にも、符合した。





面倒な方へ。
複雑な方へ。
難しい方へ。
安全な道より渓谷沿い、崖っぷちな方へ。
話を合わせてればいいのに天の邪鬼に。


これはもう、どうしようもない、あたしの性(さが)かもしれない。


だけど、それが面白い、と思えるのだから、やっぱり、しょうがない。


あたしは長女とはいえ、実家を出た身。
弟が守ってくれてる実家に迷惑はかけられないから、生活費は稼がねばならない。
よって、仕事はおろそかにできない。


だけど、マニュアル車は面白い(笑。


だから、スケジュール調整がものすごい大変だけど、頑張ろうと思う。
期限ギリギリになっても、絶対に、なんとかして、マニュアルの運転免許を穫る!
車を買える財源は確保してないけど(笑。


That's Enough !!!


オモシロイ毎日が、あたしにもたらしてくれる、言葉にできない宝物が、
なんだかもう持ちきれないほどいっぱい。


こんなワクワク、ひさしぶりだ。
穫る。