視線
Ray Charles / That's Enough
敬愛するレイのあまり知られてないブルース。
なごむ。
夜更けの、綿菓子みたいな雲に月が漂うさまが、よく似合う。
*
あたしは免許証というものをひとつも持ってなくて。
三年ほどまえから、無性に車の免許が欲しかった。
友人に、「ワーカホリックか?」と言われるほど忙しい毎日だけど、
免許を穫る!とある日無性に思い立ち、
今、信頼する友人の勧めた自動車教習所に通ってる。
まだ三週間ほど。
もうすぐ一段階がなんとか終われそう。
マニュアルを選んだ。
仕事仲間には、なんでマニュアル??と言われるけれど、
どうせ穫るなら、MTじゃなきゃ。
これは、譲れない。
一段階で15時間。
二段階で19時間。
実車時間。
猛烈な仕事のスケジュールと相談しながらだから、それこそほんとに大変だけど。
実車10時間を過ぎて、マニュアル車の楽しさが、なんだかわかってきた。
ホントの最初は、クラッチとアクセルの踏み加減がわからなかったり、
速度によってブレーキとクラッチを踏み分けたり、なんてのも、
気が狂いそうにこんがらがって、
わかんない、覚えない自分に腹が立って、教習所の人気のないベンチで泣けちゃった。
けど、ちょっとずつ、ちょっとずつ慣れてきて。
5時間めか6時間めにAT車に一時間だけ乗ったのだけど、
この一時間、マニュアルに乗せてくれ!って思った。
AT車は、道具としてとても優れてる。
でも、マニュアルの面倒臭さ、面白さをちょっとでも垣間見てしまったから、
使い勝手がよ過ぎて、詰まらなかった。
なんて、偉そうに書いてるけど。
まだ一段階を終える終了検定、終了学科も終えてない、中途半端もんなのだ。
なんも言えない。
けど、ものすごく大変だけど、ものすっごく楽しいのだ、マニュアル車。
*
担当の教習の先生が、他の先生よりも多く、一緒に乗ってくださる。
あたしの担当の方はとても素晴らしい先生で、教え方も、頃合いも、叱り方も、
ぜんぶしっくり来る。
あたしは、幸せもんだ、と思う。
その方が言った言葉。
先に目標を定めて。
そこに向かってハンドルを切る。
近づいたら、また先に目線を飛ばして。
その繰り返しなんです。
もちろん車の死角になる周辺には気を配りながら、だ。
そのスタンスは、運転にも、そして、生き方にも、符合した。
*
面倒な方へ。
複雑な方へ。
難しい方へ。
安全な道より渓谷沿い、崖っぷちな方へ。
話を合わせてればいいのに天の邪鬼に。
これはもう、どうしようもない、あたしの性(さが)かもしれない。
だけど、それが面白い、と思えるのだから、やっぱり、しょうがない。
あたしは長女とはいえ、実家を出た身。
弟が守ってくれてる実家に迷惑はかけられないから、生活費は稼がねばならない。
よって、仕事はおろそかにできない。
だけど、マニュアル車は面白い(笑。
だから、スケジュール調整がものすごい大変だけど、頑張ろうと思う。
期限ギリギリになっても、絶対に、なんとかして、マニュアルの運転免許を穫る!
車を買える財源は確保してないけど(笑。
That's Enough !!!
オモシロイ毎日が、あたしにもたらしてくれる、言葉にできない宝物が、
なんだかもう持ちきれないほどいっぱい。
こんなワクワク、ひさしぶりだ。
穫る。