桜香




怒濤の仕事漬けが、ふっと途切れた翌日、旅に出て。
念願の桜見を。


起きるまで眠って。
夜の帳をゆっくりと体じゅうに浴びて。
朝がはじまりなのか、昼がおしまいの時間なのか、夜なのか。
そんなのどうでもよいくらいに過ごして。


桜は、我関せず。
といった風情で、すとんとそこに佇んで。


美しいですね、なんて囁いたら、ぷいっとそっぽ向かれそうに。
気高いほどに美しかった。





歌舞伎座が建替えを終え、第五期を迎えた。
今まで興味はあってもいざ観劇となると腰が引けてたけど、
縁あって、初ひとり歌舞伎、してきた。


靴を脱ぎ、桟敷へ。
弁当を広げ、ほんのちょっとお酒を舐めながら。
大衆芸能の頂点、と言われるゆえんが、体験して、沁みた。


おもしろかった。
敷居は低く、あたしのように歌舞伎無知でも楽しめる。
ライブは、やっぱりイイ。


舞台上にも桜が咲いていた。
はらはらと、舞い降りる桜の花が、ぷいーんと香るようだった。


歌舞伎座、という場所へ、旅に来た気がした。
来年の春は、天女が行きたがってた金比羅歌舞伎へ、ぜひとも訪れてみたくなった。





人は、どうやら、ちょっとずつ成長するものらしい。
足枷のようにまとわりついてたモノコトに、直球で対応できるように、なってた。


“三歩進んで二歩下がる”って、言い得てる。


生きてるぜんぶがおもしろい。
がっかりも、悲しいも、落胆も、後悔もぜんぶ含めて、おもしろい。


落ちたら上がる。
上がり続けだとちょっと落ちる。
けど、進める。
そうやって、生き進めるのが、おもしろい。
人生は、美しい。