No Woman No Cry




あたしの部屋には電波時計があって
ひと月に一度ほど、なんの前触れもなく、時計自身で時刻調整をはじめる。


ちりちりって音を出しながら、すべての針がくるくる回りはじめるのだ。
それも、突然に。


理由はわからないけど、あたしはその調整作業が始まると、怖くなる。


あたしの預かり知らぬ次元で、時間が知らない方向に動いてゆくような気がして。


二分ほどまえ、また調整が始まり、今は正しい時を、時計は確かに刻みはじめてる。
なにもなかったような、涼しい顔をして。


ちりちりと、くるくる回る時計の針を見ていたら、急にこの曲が聴きたくなった。


No Woman No Cry
やっぱり理由はわからないけど。


どんな時代にも、どんな状況にも、矛盾はあって。
呑み込んで隠すのではなく、矛盾を矛盾として、キツくても刻み付けておくことが、
次の時代を、次の時間を、はじめるきっかけになるのだと思う。


誰にも奪えないものを、心にたくさん持ってる人は、強い。


時を遡って涙が着いて来たとしても、
その涙さえ、誰にも奪えない、大切な宝物だと、あたしは思う。