山波
朝焼けに煙る山の波。
千切れた雲が、空を散歩してるみたいに浮かんでた。
紫に色づいた空が白み、薄い藍色に染まって。
天からの光に輝きながら、空色になった。
夜明けを越えて、朝焼け。
このあと、見晴るかした山の波間で、雲を抜けながら、あたしは虹を見た。
朝露に濡れる苔、頑強な山の壁の土色、山々に添う樹々の森。
日本の山には神が宿る、と山に入るたび思う。
沈黙の山波。
けれど得る深みは千言万語より響く。
山に棲みたい。
川のそばで。
想いは膨らむ。
寿命を全うして、山に抱かれて眠りたい。
宇宙からしてみれば、ほとんどのイキモノが塵ほどの大きさもない。
そのなかの人間と名付けられたイキモノのうちの一個があたし。
大したことないんだ、抱える悩みなんて。
生まれた奇跡をただ感謝すればいいだけのこと。