運命の人

どうしても忘れられない人がいる。
愛とか恋とかじゃない、魂の奥の方で呼び合ってるような人。


会ったのは十年以上まえ。
初めのなん年かはみんなでよくお酒や食事をしてて、
その頃から今も、手紙やメイルのやりとりがずっと続いてる。


一年に二三度、電話をくれる。
なぜか、そのとき、あたしは雲海に魅入ってたり、古都で仏像に魅入ってたり、
時を忘れて山に籠ってたり、してる、不思議なことに。


時折、不意にかかってきた電話に出て、
信じられないほどの長電話をする、他愛もない話で。


その人のいる業界では、ずいぶん名を馳せていて、
ネットで検索すれば、驚くほど出てくる。
あたしもその人もいい年だけど、
あたしの業界でも、その人の業界でも、まだ若手として。


運命の人は、誰しも三人居る、と、スペインの心理学者が話してくれた。


実際に付き合ったり、結婚したり、それが運命の人とは限らなくて、
自分にとって会うべき人、それが運命の人だ、と教えてくれた。


そうだとしたら。
あたしは、もう運命の三人に出会ってる。
どうしても忘れられない人、は、間違いなくその一人。


だけど、あたしは、運命の人に関する定義が先述の通りならば、
三人どころではない気がする。
今も、そして、これからも、続々と運命の人に出会う気がする。


もう十年も、忘れられないその人に会ってない。


魂の底で呼び合ってる気がするのは、あたしだけかもしれない。
それでも大切な人には違いなくて。


不意にかかってきた電話に出られた時に、覚えてたら、聞いてみよう。
魂の底で、あたしたち呼び合ってる?って(笑