情景
大きな月が美しい晩。
新宿の、街から少し離れた道ばた。
食料品の買い物帰りの、大学生くらいの男の子と、お母さんが、
歩道より少し高い階段の上に居た。
息子さんがデジカメで、低く輝くイブの満月を撮影してて。
カメラが捉える先を、母親もじっと見詰めてた。
なん枚か撮影した息子さんが、
ほら、みたいな感じで母親に撮ったばかりの月を見せた。
お母さんは、カメラの画面を指差して、きれいね、とでも言ったかのように
とても嬉しそうな表情をした。
そして息子さんはなぜか照れて頭をかいて、母を促しながら、ふたりで家路に着いた。
*
ただそれだけの情景なのだけど、妙に心に残った。
暖かい気持ちになって、とても嬉しくなった。