魔法




ずうっと連絡が取れなかった旧友の無事が確認できた。
仙台に事務所を構え、海岸線のランドスケープ設計に携わる旧友。
無事を知って、ほんとに嬉しかった。
今は仲間とともに、復興と仕事に奔走する毎日のようで、


 これまでで一番充実した日々だ。


そうだ。
強い。


震災からもうすぐ7ヶ月。
あの震災を忘れた人はいないと思うけれど、想いが薄れている人が多い気がする。
あたしもその一人だ、ということを、旧友との会話で知らされた。


 想いがカタチになるとしたら、東北はとっくに元に戻ってるんだよねぇ。
 魔法使い、今こそ魔法をかけてよ(笑。


旧友は笑いながらあたしにそう言った。
腰まである髪に、ジャニスのようにパーマをあてて、黒ばかり着てたあたしを、
学生時代の友人からは、まるで魔女の風情、と言われてた。


ほんとに魔法が使えたなら、どんなにいいか、と思った。
そう思ってたら、旧友がこう続けた。


 だけどさ、ちょっと魔法かかってるかもね。
 近所のやな親父や、つんけんしてた奥様連中たちがさ、人が変わったようなんだよ。
 住んでるとこ大丈夫だったから、近所のみんなで日々復興の手助けに出掛けるんだけど、
 その協力度合いといったらさ、もういつも涙出そうなくらい結束固いんだよ。


困ってる人を助けるのが当然だということ。
分け合って暮らすことが当然だということ。
笑顔が、人を救うのだということ。


旧友は、そんな素晴らしい気持ちの芽が、
多くの人の心に芽生えてることを続けて話してくれた。


被害に遭って亡くなられた方々が、神様となって、
守り、人々を素晴らしい方向に魔法をかけて導いてるような気がした。


そんじょそこらのことで、ぶーぶー言っちゃいられない。


東北は、強く美しく、生まれ変わる。
遠くから応援するあたし達も、東北に負けないように、強く美しく生きなきゃ、と思う。