白炎




関東のとある城から眺めた風景。
湧き立つ雲が、次々に形を変え、通り過ぎて行って。
雲がまるで炎のように思えた。


白い炎。
空にも燃えさかるモノがあるのだ、と、
朧げになんの根拠もなく納得してしまった日だった。


ある人がこう言ってた。


 世の中に、絶対、なんてことはないんだ。


そうかもしれない。
いや、たぶん、そうだ。


けれど、人は心に強く思ったとき、つい、絶対という言葉を吐いてしまう。


きっと、それは、自分に約束してる、のかもしれない。
そう思えたことを守りたくて、頑なに、自分に約束を誓うように、
絶対、という言葉を吐くのだと思う。


また、ある人がこう言ってた。


 なん十年も追い求めたことに、落胆したときは、
 辛過ぎて、もう生きていたくなくなった。


そのとき、きっと、違うものが見えはじめたのだと思う。
だから、ずうっと長い時間追い求めたことに、落胆できた、のだ。
きっと、なにかがわかった瞬間、なのだと、話を聞いたとき、あたしは思った。


自分が感じたこと、思ったこと、考えたことが、方向を変える時が来ることもある。
消去してしまいたくなることも、ある。


だけど、信じて、追い求めた時間は、決して無駄なんかじゃない。
その時間があったからこそ、次が見えてくる。
次を感じられる。


姿を変えて、なお、空を雄大に横切る雲を見ていて、あたしはそんなことを思った。