湖沼




気を失いそうなほどに暑かったある夏の日
初めて出掛けた、茨城は霞ヶ浦あたりの、湖沼に続く水田。


地平線。
いや、草平線か。
こんな風景、まるで水彩画の題材みたい、と思いながら、
ゆらゆらの陽炎のなかだったものだから、幻か、とか思いながら、シャッターを切ってた。


写真ではぜんぜんわからないけど、
畦が通してあって、このなかを、ずんずん歩いて行ける。


歩き進みつつふと横を見ると、白鷺が何羽も、水田をつついてたりして。
美しくて、吃驚して、撮るのも忘れるほどに。


今の気持ちは、こんな風景。


実るかどうかわからないけど、たわわに葉を伸ばした稲が、ぐんぐん育ってて。
俯瞰してみると、平らで、平穏で、どこまでも変化のない様子。
だけど、広がる風景のなかには、素晴らしいものが息づいて、白鷺だっている。
出会ったことのない、奇跡のような自分が、殻を割って出てきそうな。


妄想だとお笑いくださいませ(笑。
感じたままを言葉にすると、そうなるのだ。


そんな、気持ちなのだ。


朦朧とするほど暑い日に、この場所に、なんと二時間ほども居た。
ただ、歩いてたのだ。
この草原、というか水田を横切り、湖沼を眺めた。
そして、来た道をまた戻ってきた。


汗はポタポタかいてたのだけれど、とても爽快だったのを憶えてる。
無我の境地だったのか。
いや、それは言い過ぎだな。