ニコ

「夜から雪がちらつくかもしれない」と、天気予報士が言ってるにも関わらず、
今朝、あまりにお陽さまが暖かかったので、つい洗濯をした。


ベランダに置いてる洗濯機は7kg洗えるでっかい奴で、
洗濯好きのあたしは、
そのどでかい洗濯機で、少なくとも二回分洗う、一度に。


とうぜん干す時間も長いわけで、
空も雲もおもいきり仰ぎながら、長時間、楽しくぱんぱんと気分よく干し続ける。


近所には、野良猫がいっぱい居る。
隣りのお宅は一軒家で、大きな柿の木と、お庭には季節の樹々が植えられてる。
ベランダから、そのお宅で猫たちがはんなりお陽さまの光を受けてるのが覗ける。


あたしのお気に入りの野良、ニコは、先日は大きな柿の木を登ってた。
あたしが勝手にニコと呼んでるだけだけど。


ニコは、もう子どもではない感じのくせに、やけに体が小さくて、
なのに、いつも仲間にじゃれはじめたり、喧嘩を仕掛けたり、走りはじめたりする奴。


そのニコが、今日はアパートの一階の高さくらいある塀の上で、ひなたぼっこしてた。


背筋を伸ばして、首を下に折って、地面を一心に見詰めながら。


なにかが居るのだろうけれど、あたしの部屋のベランダからは見えない。
ま、いっか、と思って、大好きな洗濯を続けてると、塀の上からニコが消えてる。


きょろきょろ捜すと、さっきまで見てた地面のあたりに、ニコが行儀よく座ってる。
そこにもお陽さまの光が当たってた。
そして、ニコの視線は、さっきまで自分が座ってた塀の上。


猫と過ごした日々もあって、決して短い期間じゃないのだけれど、
ニコは、あたしの視線を釘付けにする。
たぶん、哲学者だ、ニコは。