rojo




持ってる赤色は、口紅とハンカチ、半纏、半襟、帯だけ。
洋服に赤を選んだことはないけれど、樹々の赤や、空が焼ける赤は大好き。


秋の名残のように燃え盛る楓の赤は、
冬が到来したはずの暖かな東京の風に、なびいて揺れてた。
鮮やか過ぎて、なにか大切なモノコトが蘇りそうな感じがした。


あたしが生まれた故郷は、川がとても多い街で、川沿いは桜並木。
今も変わらず、並木は続いてて、春には、それは美しい桜色に染まる。


家に一番近い橋のまんなかから、記憶に残る初めての夕日を見たとき。
あまりに赤くて、怖くなった。
空がこのまま燃えてしまいそうな気がしたから。


両親は共稼ぎだったので、小さな弟を保育園に迎えにいって、確かその帰りだった。
あたしの小さな手が、弟のもっと小さな手を握り、橋の上で、じいっと夕日を見た。


あの光景は、なん十年も経った今でも忘れられない。
あたしにとっての最初の赤。
胸が締め付けられそうに美しい、懐かしい想い出。


冬、雪が降ったら、寒椿の赤が、鮮やかに街を彩る。
大人になって知った、赤だ。


なにが書きたかったのか、なんだかわからなくなってしまった。
赤が、ふと気に掛かっただけかもしれない。