姿勢
大樹をまえにすると、言葉を無くす。
圧倒的な無条件で、生きていることを肯定されるから。
そして、深呼吸したくなる。
あたしも生きていることを確認したくなるから、かもしれない。
銀杏を眺めてて、「アラビアのロレンス」を想い出した。
生きているということはどういうことなのか、
深く想い巡らされた映画だから、かもしれない。
共感は一切できない映画だった。
けど、切なくて、愛おしい映画だった。
相容れなくても理解できてしまう、そういう哀しさは、年を経ないと、わからない。
言葉では説明できないものだから。
銀杏は、そんな言葉にできぬ想いをぜんぶひっくるめて、
儚く黄金色に色づいてるように思える。
百花に先んじて咲く梅や、季節を塗り替えるような絢爛たる桜とは異なる、
寡黙だけど生きざまが多くを語る男のように、包容力あふれた伊達姿に思えるのだ。
ロレンスの哀しいまでの性への執着は、女であることが歯痒いほど、切ない。
憧れや、羨望とは異なる、イキモノとしての同感かもしれない。
なにかを本気で守るということはどういうことなのか。
守らねばならぬ多くの命と引き換えに、国の威信を通すことに、なんの意味があるのか。
どうか、花や木々、海や山、野、大地、空に、学んでほしい。
イキモノとしての一番大事なコトを想い出してほしい。