心根




枯れ草に、ごろんと横になる。
体が冷えて、おもむろに立ち上がり、落ち葉を踏みしめながら、ぐんぐん歩く。


公園で、足にぐるぐる包帯を巻いた車椅子の男の子を見掛けて、
思い出したことがあった。





救急車が通るとき、急ぐハンドルを止めて、道を譲る多くの車をみると、
あたしはいつも、泣きそうになる。


サイレンを轟かせる救急車が向かってる人、それとも、もう救急車に乗ってる人を、
みんなして助けてるから。
そんな感動を、目の当たりにするから。


ちょっとまえ、大きな交差点で信号待ちをしていたら、
遠くから救急車の音が近づいてきた。
渋滞気味だったその道は、
並んでた車がそれぞれ斜めに動いて、救急車が通れる隙間を作りはじめてて。


信号が変わって。
もうすぐ救急車が通りそうなその時に、
サイレンを聞いてか聞かずか、道を横断して曲がろうとした車があった。


そのとき。
向かいに停まってた最前列の車二台が、ほぼ同時に、大きなクラクションを鳴らした。
なに発進してんだ、止まれ、と。


曲がろうとしていた車はそのクラクションに気付き、交差点に差し掛かる手前で止まり、
直後、救急車が通り、アナウンスが流れた。


 ご協力、感謝致します。
 ありがとうございます。


やっぱり、あたしは泣きそうになった。


規則なんかじゃなく、心を基準に、世の中は、やっぱり動いてるんだ、
と、そのときもまた確信した。
暖かいんだ、心って。





枯れ葉に、横になった人なら知ってると思うけれど、枯れ葉のベッドは、暖かい。
寝返りを打つたびに、なんとも言えぬ葉のすれる音がする。
包まれてるような、優しい気分になれるんだ。


それで、思い出せたのかもしれない。
道でいつも泣きそうになる、人の暖かさがもたらす感動を。