秋雨
昨日は寒露。
草の露が冷たく感じられる頃。
そして、寒露から、旧暦では長月。
東京は、明け方から冷たい雨。
土砂降りじゃなく、秋雨。
雲の上から、たくさんのスポイトでポトポト地に雨を垂らしてるような、感じ。
そして、ぐんと冷えてる、寒い。
ベランダで花をつけてるローズマリーとバラも、
今朝は震えてるみたいだった。
学生の頃、写真をやってる先輩に、雨のなかで写真を撮ってもらったことがある。
素の自分を知りたくて仕方なかった頃のこと。
たしか、今日よりもう少し雨の多い、秋の日だった。
フィルムで撮ってもらって、現像にも参加させてもらった。
オレンジ色の薄暗い現像室で、印画紙から浮かび上がった雨とあたし。
泣いてるみたいだね、なんていうか、写真がさ。
君が泣いてる、のじゃなくて。
と、先輩は付け加えて、淡々と現像作業を続けてた。
なんだか、忘れてたこと、急に思い出した。
その先輩は、船に乗って鯨をメインに、魚や鳥を、水の上から撮ってる。
ライフワークにしたい、と語ってたことを現実に変え、きっと今も撮り続けてるだろう。
雨のなかで鳥が鳴いてる。
いや、泣いてるのかもしれない。
昨日の寒露は、亡き父の誕生日。
幾つになっても、命日という新しい記念日を持っても、誕生日は、変わらない。
人懐っこく笑う、はにかみ屋の父の、愛にあふれた笑顔が、今もはっきりと浮かぶ。
やっと迎えた秋の日を、迎え喜ぶ時間を過ごそう。