運命の輪

あたしはベートーベンの曲が大好きである。
なかでも、今年はなぜか交響曲第五番ハ短調、俗名「運命」を偶然聴く機会が多くて、
うまく言えないけれど、ハマっている感じ。


四歳からオルガンを習っていたので、
バッハのミサ曲は、もちろんぜんぶな訳はないけれど、わりと多く弾いてきてて、
けど、そのせいか、望んで聴くクラシックは、
オルガンやピアノのソロ、バイオリンやチェロのソロ、人数が多くても四重奏どまりだった。


三年ほどまえ、ひさしぶりにブラームス交響曲第四番ホ短調をかけて、
つーっと涙が出たのを境に、オケがとても好きになった。


ブラームスの四番はズービン・メータ指揮のイスラエル交響楽団が、
ベートーベンの五番はブルーノ・ワルター指揮のコロンビア交響楽団が、好きだ。
今は、である。


微妙な変化なので、どうにも言葉にできないけれど、
あたしの場合、毎年、惚れ込む演奏が変化するのだ。
まだ、筋が一本、あたしのなかに通ってない証拠、かもしれないけれど。


ベートーベンの五番は、承転結起、という感じがする。
起承転結、がモノゴトの流れ、とするならば。


いきなりモノゴトが動いてて、把握できたと思ったら、
すぐに大事件が起こり、掻き回されるようなことになり、
落ち着いたと思ったら、新しいナニカが、もう始まってる、といった具合。


「運命」という俗名がついた理由には諸説あるけれど、
音の展開を感じるに、まさに、運命、と思わざるを得ない気がする。


終わりは始まり。


聴くたび、運命とは、きっと輪っかなんだろうな、って思う。