雪花

今週のお題「雪の日の思い出」、初挑戦してみます(笑。




郷里から東京に出てきて、三度めの初春。
桜が咲きはじめた日。


その頃住んでた四畳一間の二階の部屋からは、一本の小さな桜の木が見えてて。
春でなくとも、夏も、秋も、冬も、その、小さな桜の木が見えると、
なんだか嬉しい気持ちだった。


いつものように、ベッドの上で身支度をしながら、ふと桜の木を見下ろすと、
昨日ぷっくり大きくなってたつぼみが、いくつか開きはじめてた。


ちょっと早い桜の時期、到来。
そう思って、いつもよりわくわくしながら、早めに支度をすませて外に出た。


 桜咲いたなぁー。


と心んなかで幾度も呟きながら愛でてた。
ら、空からなにかが降ってきた。
冷たい。
せっかく咲きはじめたのに雨かぁ?と思って空を仰いだら。


 雪?だ!


薄桃色の桜の花に、真っ白の雪が、ちょっとずつ積もっていった。
どれくらいそこに居たか、正確には覚えてないけれど、
寒っ!と震えるまでは、居て、じいっと、桜と雪を、眺めてた。


学校に行くのをやめて、もっと厚着をして、眺めるのを続けようと思った。
部屋に駆け上り、セーターを着込んで、手袋をして、もいちど桜の木のとこに行ったら。


まだ雪は降り続いてて。
桜の枝に、白い雪の花が、たくさん咲いてた。


あれからものすごく長い年月が経ったけど、あの雪の日は、忘れられない。
あの日から、あたしは、それまでよりもっともっと、雪が好きになったんだ。