ラヂオ体操

午前六時半になると、すぐ近くの公園で、ラヂオ体操がはじまる。
秋の長雨のなか、今朝もそのはじまりの音楽が聞こえてきた。


東のベランダの大窓を開けると、ほんのちょっとだけの雨。
雨間を縫っての開催。


参加されてるのは、近所の方々。
あたしより二世代ほどまえの年齢の方が多い。
時折、近所の子供が恥ずかしそうに参加してるのが、なんか、いい。


体操の準備運動のように、六時っくらいから公園の清掃をされ、
半を打つと、大木が中央に据えてある広場に集まり、体操がはじまる。
ベランダから見える公園の茂み。
広場の様子も、部屋からちょっと見える。


五分ほど体操した後、ざぁっ、とまた雨が強くなった。
ざわっ、とどよめきが起きた。
参加されてた方達の、がっかりした空気が伝わってくる。
ぶち、っとラヂオの音が途切れ、みんな、持ってきた傘を広げてた。


手をつないで散歩してる仲の良いご夫婦。
いつもずうっと話をしながら歩く仲の良い三人組の紳士たち。
ご近所同士らしく、うわさ話を大声で話す五人組。
みんな、傘を寄せ合って、家路に着いてた。




自分より長く生きていらっしゃる方々に対して、
敬意を払うのが当然だと思ってる。


 長幼の序


という言葉がある。
年長者は、幼き者を守り諭し導き、幼き者は、年上の者に敬意を払う。
たしか、出どころは、儒教だったように憶えてる。


まずは、長幼の序、だと思ってる。
いろんな方がいらっしゃるから、
すべての人に対し、敬意を持てないかもしれないけど。
年長者の方は、自分より長い年月を過ごし、いろんな経験を積み、
きっと、たくさんの思いを心に秘めてるはず。
それを、世論や噂などに耳を貸さずに、まず自分で受け止めたい。


敬意を払えない、そう自分で思えたなら、批判すればいい。
そして、その批判から、ナニカを得ようと、すればいい、って思う。




雨は、まだ降り続いてる。


中断したラヂオ体操に参加されてた方々は、みな家に辿り着いただろうか。
冷えた体を温め、もう朝ご飯を食べてるかもしれない。
もしかしたら、二度寝のために、布団に潜り込んでるかもしれない。


ラヂオ体操の音楽が近所に響き渡り、
終わると同時にざわざわと賑わいのなか家路に着く音がすると、
なんだか朝が気持ちいい。


雨もいい。
けど、ラヂオ体操の時間だけは、ちょっとお休みしてほしい。
毎朝の、この時間をとても楽しみにしていらっしゃる方々のために。