山越え

昨晩は明け方まで仕事を詰めて、午前三時に帰宅した。
スイッチを切り替えないと、どうしようもない、っくらいの疲れだったので、
一時間だけ、と決めて、赤ワインを呑んだ。
オリーヴオイルをつけたパンがつまみ。


午前四時になり、グラスに残ったワインを呑み干し、布団に潜り込んだ。
朝が明けてからの大仕事をまえに、眠れるわけないじゃんか、と思ってたけど、
知らぬ間に、すぐ睡眠に。


午前六時。
携帯の目覚まし、GET BACK が盛大に鳴る。
体を斜めにして起き上がり、風呂を入れた。
三十分かけてゆっくり風呂に入り、体と頭を起こして、身支度。


午前七時半。
部屋を出て仕事に出発。


矛盾だらけの依頼と、矛盾だらけの進行をもとに、
丸一日、懸命に取材をしなければならない日が、はじまった。


矛盾を発する、見守る方々。
それを受け止める我々現場の人間。


取材がはじまったら、矛盾など、もう、どうでもよくなってた。
いいものを作りたい、取材に応えてくださった方に気持ちよくしてもらいたい、
そんな想いが、現場で、バタバタと立ち振る舞う我々を包んでた、確実に。


事情など、くそくらえ、だ。
下品でごめんなさい。


けど、現場で、制作の人間の気持ちがひとつになった時、
あたしは、これまで抱えてた、余分な懸念な思いが吹っ飛んだ。
どうでもいいことを、なにを、くよくよと!と。


山を越えられたなー、って思った。


仕事の山場でもあるけど、
それよりもなによりも、大事に思ってた空気を思い出せた、
なんというか、モチベーションの根本を奮起させることができた、
そういう、ものすっごい山を越えられた、という達成感でいっぱいになった。


いい日だったなぁ、と、心から思えた。


今日はゆっくりお風呂に入ってから、ゆったりと眠れる。
明日は、そう、七時くらいに起きればいいから。


仕事はまだ同時進行で続く。
けど、昨日までとは違った、太くて大きな樹木のようなモチベーションが、
あたしのなかに、しっかり、育ってたことを実感しつつ、仕事が続くのだ。


目に見えずとも、あたしにとっては、
昨日までとは、明らかに違う明日が、朝日とともに、きっとはじまるんだ。
そう思うと、ヤバいけど、次の山を無性に越えたくなる。