月灯り
昨晩、部屋に戻ると、ベランダが光ってた。
電気をつけずに手探りでベランダまで進み、そおっと窓を開けた。
ベランダが、真っ直ぐ上から照らされてた。
上を仰ぐと、月が居た。
にこにこ笑ってるみたいに輝いてる月が居た。
月灯り。
スペインのもの凄く安いワインをグラスに注ぎ、ベランダに面した窓際のベッドに腰掛けて、
そおっと、月を見上げて過ごしてた。
月は、感情を籠らせてる気がする。
見上げる、その人自身の感情を。
泣いて見上げる月は、とても冷たく思えたりする。
それは、泣いてるあたしの気持ちだったりする。
優しい月灯りの夜は、自分ではどうしたらいいのかわからなくっても、
たぶん、なにか優しい気持ちが生まれてるんだろう、って思う。
知らぬまに季節が巡るように、人の変化は、手にとるようにはわからない。
ましてや、自分の変化など、わかるはずがない。
月や、空や、美しい風景を前にした時の自分の気持ちで、自分の変化をわかったりする、
そんなことも、あるんだと思う。
月に感じるあたしの深い想いは、あたし自身が受け止めてる。
言葉にできなくても、誰かにそれを伝えられなくても、あたしのなかに、染み込んでる。
それは、あたしの一部となり、心や、血や、肉や、記憶に鮮明に残るはず。
目に見えぬ想いほど、深いモノはない。
その想いは、いつか叶う。
必ず。
想い描いた未来とは異なっていても、深い想いは、必ず叶うと思う。