POIROT

ポワロを見続けてる。
かのアガサクリスティ作の、あのエリュキュールポワロが主役の推理ドラマ。


あたしはテレビを持ってない。
ブックのサブ画面に使うモニタがあって、
そこにスカパのチューナーやデッキなんかを繋いで見てる。


住んでるアパートの家主さんがケーブルテレビ契約してくれてるから、
ビデオデッキをいじれば地上波も見れるけど、ほぼ、見る気がしない。
NHKのみ映るようにしてて、朝と夜のニュースを十分ほど、時折、映してる。


十年ほどまえまでは、社会情勢にはある程度、精通してなきゃいかん、大人なら。
とか、思ってたけど。
それは大事なことじゃない、とわかってから、
今の経済や政治、社会の仕組みなんかを無理して知ろうと努力するのをやめた。


時々、ものすごく興味を惹かれる状態に出くわすけれど、
普段は、そんなことは、ほとんどない。


たぶん、生きてるうちに、ほんとに大事なことって、あまり多くない気がするんだ。


ポワロにもうずいぶん長いこと惹かれ続けてて、
のべつ幕無しにデッキで流してるのも、たぶん、大事なことではない。


だけど、見たい、という気持ちを、大事にしたいな、と思うのだ。


あたしは評論が苦手だけど、ポワロの魅力を挙げるとすれば。
 仕事に対するプロフェッショナルな姿勢が気持ちいいこと。
 人の心のグレーの部分を優しく包み込んでくれてること。
 おだてられるとすぐ木に登ってしまうこと。
 ほんとに魅力的な女性にあうと、犯罪者でも惹かれてしまうところ。
 嘘が嫌いで、正直で素直な人を助けたくなるところ。
とか、いろいろ。


小説のなかの人物が、ときに、現実の人間よりも、雄弁に心を語ることもあるんだな、
と、幾度見ても感心してしまう。


アガサクリスティの才能と、幾人もの脚本家の才能と、
ポワロ演じるデビッド・スーシェはじめとする俳優陣の力と、監督、スタッフ、諸々…、
構成するすべての要素が素晴らしく噛み合った結果なのだろう。


こういう世界を創りたい、と想定しても、なかなか、こう旨くはいかない。
魅力を感じたある点を追求して没頭して創り込んでいった結果、さてどうなるか。
奇跡が起こる時は、誰にもわからない、きっと、そういうことだ。