イヴ

明日は中秋の名月十五夜なのに、長雨。


明け方には針のように細い雨が、
今は北斎の描く土砂降りのように、
不均等に美しい手書きの鉛筆の線のような雨に。
真っ直ぐの鉛筆の線が時折風にあおられて、
斜めになったり、戻ったり。


窓に切りとられる四角の、雨の風景が、
まるで生きモノのように思える。
たぶん、実際に、そうだ。


月は、空の彼方に、いる。
居なくなるはずがないのだから。
ただ、見えない、だけ。
会えるはずなのに、会えない、みたい。


けど、雨も、いい。
だけど、一年に一度の十五夜の晩は、月に会いたい。